神戸で訪問看護ステーションを運営し、訪問看護部門の代表を勤めている足田さん。
従来ベテランスタッフばかりだったという訪問看護ステーションのイメージが大きく変わり始めているという現状や、看護師のなり方・職場の選び方について伺いました。

あむKOBE訪問看護ステーション
代表
足田実樹さん
アパレル・カフェ等の経験を経て、27歳の時に看護師免許を取得。病院勤務の経験を経て、『あむKOBE訪問看護ステーション』を設立。「これまでと同じように自宅で暮らしたい」と望む患者様の想いを尊重し、創意工夫しながらサポートを行う。保有資格は正看護師、ICAA認定リンパ浮腫専門看護師、メディカルアロマセラピストなど。特技はメイク、眉毛のワックス脱毛。神戸在住10年以上。
看護師のキャリア選択が変化してきている
一般的な看護師のファーストキャリアとは
新卒の看護師は、最初の就職先として中規模以上の病院を選ぶことが一般的です。
人にもよりますが、まず数年程度はそこで基礎的な知識や技術を身につけます。その経験を通じて自分が今後どのような分野にてキャリアを積んでいくかを考えるのが、一般的な看護師のキャリアのスタートなのです。
ですので従来、免許を取り立ての新卒の看護師がいきなり訪問看護ステーションに就職して在宅医療の現場に立つことは、少し無謀な挑戦だと考えられる風潮がありました。
訪問看護師の仕事内容は病院看護師とは大きく異なる
訪問看護とは、看護師がご利用者様のご自宅等に行ってケアを提供するものです。基本的に看護師は1人で訪問します。
病院と違って、医師が近くにいる訳でもありません。さらに使用できる医療機器や医療用品なども限られます。このような環境の部分に、心理的なハードルや不安感を持つ看護師はとても多いです。
少し前までの訪問看護師は、キャリアがあり大ベテランと言われるような50代以上の方が主流でした。「どんなことにも対応できる看護師でないと、訪問看護は難しい」というのが、多くの看護師が持つイメージだったのです。
時代の変化により若い在宅看護師が増えている
しかし最近、20代の若い看護師も少しずつ訪問看護の場で働くことが増えてきました。キャリア形成や働き方についての選択肢が増え「病院で働くことだけが看護師のキャリアではない」という考え方が時代の変化と共に広まってきたのです。
前々から言われています通り、看護師は人手不足です。病院で働く看護師はどうしても激務となってしまいます。結果病院で働くことに疲れたり、自分に合う働き方を探す看護師が増えてきたという面もあるでしょう。
訪問看護の中でも看護師のキャリアの積み方は多様です。看取りや在宅で過ごす難病の方のケアなどに特化した認定資格や、特定医療行為(本来なら医師しか行えない処置)を行うことができる資格の創設など、細分化された制度の整備が進んでいます。
自分軸に基づいた情報収集と選択を
看護師になるための選択肢も多様
看護師の仕事だけでなく、看護師になること自体も大変だと想像されている方も多いと思います。学校の選び方がわからなかったり、入学後も勉強や実習がとても大変だというイメージをお持ちの方もおられるでしょう。
まず学校については、大学や専門学校などいろいろな種類があり、倍率も学費も異なります。場所が都市部か地方かでも雰囲気が違いますし、金銭的に余裕のない方向けの奨学金制度や、寮を完備している学校もあります。
いずれにしてもしっかりと情報を仕入れて問い合わせや見学を行い、ここであれば通えそうというところを選びましょう。
自己判断にはなりますがSNSなどで価値観の合いそうな看護師のアカウントを見つけ、DMなどで聞いてみるのも今っぽいやり方かもしれません。付属で看護学校を持つ病院もあります。そういったところは調べやすいですし、就職先も母体の病院に就職しやすいなどのメリットもあります。
「大変なのでは…?」看護学校の体制も変化している
学校生活や実習についても、最近はイメージが変わってきているようです。私が学生だった15年ほど前は確かに厳しい指導や実習レポートを寝ないで書くことが当たり前でした。リタイアする人もいましたね。しかし時代も変わり、居残り学習のようなことも減っているようです。
自分がどう働きたいかをイメージする
看護師の働く先は多種多様です。
大きく分けると、例えば大学病院、市立病院などの中規模病院、クリニック、診療所などの小さな病院等があります。大学病院ではどちらかというと研究などに注力しています。
夜勤のイメージが強いかもしれませんが、夜勤のない働き方もたくさんあります。
どこで働くかを決める際には、まず自分自身がどんな風に働きたいか、自分が看護師としてどういう人生を生きていきたいかを考えて選びましょう。
最近は「ナスコミ」など看護師の口コミサイトなどもあります。参考にするとよいかもしれません。
私の友人は地元の銀行で働いていましたが、私が看護師になったのを見て看護学校に通い、看護師になりました。「もう40歳になるから今から勉強したってムダでは…」などと言いたくなる気持ちはわかりますが、それは諦めるための口実だと思います。看護師に限らず、少しでもやってみようと思うことがあれば、フッ軽に挑戦した方がいいと私は思いますね。
自分の関心や特性を知り、起業に挑戦
自分の特性に気付いたことが、起業のきっかけに
私が看護師になったのは27歳の時です。それまでは地元で洋服屋やカフェなどで働いていました。看護師だった母に促されたことがきっかけで、24歳で看護学校に入ったのです。
神戸の病院で4年目頃から管理職としてスタッフの育成や病棟全体の管理業務をするようになったところ、それが自分に合っていることに気が付きました。またその頃、回復期病棟(例えば脳梗塞や骨折などの手術後、自宅に戻る前に数ヵ月リハビリを行う病棟)におり、患者様の退院後の自宅での生活が気になるようになったのです。
在宅看護に興味を持って調べる中、例えば看取りが得意なところやリハビリが得意なところなど、各訪問看護ステーションにもいろいろな特徴があることがわかりました。しかし私が持っていたリンパ浮腫専門看護師の資格が活かせるステーションは近くにはあまりなかったのです。その時に「それなら自分で立ち上げるのもありかな」と思ったのです。
訪問看護ステーションの特色はさまざま
訪問看護ステーションは増えてきており、カラーも多様です。ですので訪問看護ステーションで働きたいと考えておられる方には、まず自分が絶対に譲れない条件は何かを考えることをおすすめします。
自分が在宅で何を学びたいか、あるいは理学療法士などの他職種との連携ができるかどうかも条件の例です。給料や休みの数、オンコール(ご利用者様急変などの緊急時の当番)対応の有無でも構いません。ベテランが多い・若年層が多いなどのスタッフの雰囲気や、どのようなご利用者様が多いかといった傾向もあります。
SNSの活用も方法のひとつ
また訪問看護ステーションによっては、新卒看護師の採用に消極的なところもあります。一方、新卒向けに教育のカリキュラムを用意しているところもありますので、しっかり見学し、納得いくまで質問をしましょう。今の時代、多くの訪問看護ステーションがインスタなどで発信をしていますので、そういったSNSもヒントになるかもしれません。
例えばインスタで情報発信している訪問看護ステーションも多いです。そういうところは知り合いの事業所をフォローしあっていることもよくありますので、辿っていくのも方法です。Webサイトで検索する場合も自分が住んでいる地名を入れるなど検索の仕方を工夫しましょう。求人サイトを活用するのも方法です。
タフでポジティブな社風でスタッフの働きやすさを大切にする
元気でフッ軽な社風が魅力
当訪問看護ステーションは立ち上げから丸2年経ちました。最初は5人だったスタッフも13人まで増えています。ご利用者様からは「若くて元気があるね」と言っていただきますし、新患のご依頼も基本的には断りませんので、連携病院からは「フットワーク軽いよね」などとお褒めの言葉をいただきます。私も、スタッフがみんなご利用者様のお困り事を解決しようと頑張っているのが良いところだと思っています。
社風はタフでポジティブです。自分はなぜ訪問看護師として働きたいのか、なぜあむKOBEで働きたいのか、自分の意思が明確な人の方が気持ちよく働いてくれているように思います。
訪問看護は初めてだから緊張する、不安だと言う方も多いです。しかしその不安は、あむKOBEが解決できる内容であることも多いです。スタッフが相談できなくて困るような状況は今までありませんね。
最初は不安に思うかもしれませんが、新しい方も3か月ほどで馴染んでおられます。目指すところはそれぞれ皆違いますが、在宅医療の実績を積むことは看護師としての行動力や判断力がかなり培えると思います。
失敗を恐れずに挑戦するマインドを
私は病院で管理業務をするのが好きでしたので、そのまま定年まで続けていくという選択肢もありました。しかしそれを決断するにはまだ早いと感じ、訪問看護の道に進んだのです。
せっかく看護師資格を持っているのであれば、さまざまな分野で看護師をすることができます。何かを始めるのに、遅い・早いはありません。違う分野でも自分が思うように挑戦するのがいいと思います。動けるうちにいろいろなことに挑戦するのは大きな経験になりますし、仮に失敗したとしてもチャレンジした経験は残るので、それを糧にまた頑張れると思うんです。