文教大学情報学部の池辺正典先生に、お話を伺いました。
2007年4月、文教大学情報学部に着任。2013年に文教大学と神奈川県警察でサイバー犯罪関連の協定を締結し、文教大学サイバー防犯ボランティアを設置。当該団体代表として、違法有害情報対策のための取り組みとして、サイバー防犯ボランティア活動を行っています。警察との連携だけでなく、自治体との連携も進め、幅広くインターネット上の犯罪の防止に取り組んでいます。
今回は、WEBマイニングやネットリテラシーに精通した池辺先生のこれまでの実績や研究者人生、今後のIT業界についてお話を伺いました。
文教大学 情報学部
池辺正典先生
関西大学大学院総合情報学研究科博士後期課程修了、文教大学情報学部教授。
文教大学サイバー防犯ボランティア代表、情報システム学会理事。
大学時代に学生ベンチャーを起業し、大学での研究成果などを社会に還元する取り組みを行っていた。
文教大学に着任後は、警察や地方自治体と連携を取り、サイバー犯罪防止の活動に取り組んでいる。
学生時代のベンチャー立ち上げをきっかけに
私は学生時代、情報系の学部で学んでいました。当時の研究室仲間と、WEBマイニングに関する研究成果を社会に還元するための学生ベンチャーを立ち上げ、活動を行いました。その頃から、研究者を視野に入れ、今に至ります。WEBマイニングとは、インターネットの情報を収集し、知見を得るための情報技術を用いるものです。この技術はさまざまな場面で使用することができ、地方自治体や警察の業務に活用することで、有用な知見を得ることができます。
実際に、文教大学着任後からは教育委員会関連のネットトラブル対応や警察の青少年問題対応のため、違法有害情報対策に取り組むことになり、地方自治体や警察関連で技術を活かすことができています。
警察・地方自治体と連携した取り組み
私は、数多く課題を解決するため、これまで多くのプロジェクトに携わってきました。その中でも特に、教育委員会関連のネットトラブル対応の事業の印象が強く残っています。ネットトラブル情報が集まる環境で対応方法の検討をしている時に、多くの子どもたちが、さまざまなトラブルに直面している状況を見ました。この経験が、現在までの研究テーマにつながっています。
2013年からは神奈川県警察と連携し、違法有害情報対策のさまざまな取り組みを行ってきました。そのうちのサイバー防犯ボランティアという取り組みでは、犯罪被害防止のための教育活動や広報啓発活動、サイバー空間の浄化活動などを行っています。2019年には「安全安心なまちづくり関係功労者表彰」として、文教大学サイバー防犯ボランティアが内閣総理大臣表彰を受けることができました。
現場を見て、対策を取る重要性
私は研究を行う上で、実践や現場を重要視しています。例えば、警察関連の取り組みとして、近隣の学校に向けた大学生によるサイバー防犯教室があり、現在の児童や生徒の雰囲気を確認するために、学生に付き添って、現場に伺うこともあります。実際に、「子どもがインターネット上でどんなことをしているのか」「どんな情報に触れているのか」を把握することが、効果的な防犯対策につながるのです。
また、子どもだけでなく、保護者のネットリテラシーや情報に対する意識についても把握する必要があります。保護者が正しいネットリテラシーを持っていない場合、子どもにインターネットの正しい使い方や、個人情報の守り方を伝えることはできません。被害者が子どもだとしても、子どもたちを守るために、その周囲の環境を整えることが効果的であることは、現場を見ることでよくわかります。
これからの情報・IT業界
今後の情報・IT業界に就職する方には、情報技術をさまざまな業界に向けて、調整して提供するための力が重要だと考えます。そのために、情報技術はもちろん、その情報技術を適用するための業界知識を身につける必要があります。さまざまな状況に対応することができる力を付けることが必要です。
また、今後、IT業界で活躍をするためには、変化に対して敏感になることが大切です。これらの変化には、新しい技術の開発や情報システム関連の投資などが挙げられ、特に投資はIT関連のビジネスチャンスにもなり得ます。これらの変化を捉えて、状況に合わせて行動を起こし続けることは、会社での活躍はもちろん、ビジネスで成功することにもつながるでしょう。
次世代の育成への取り組み
私は今後、自分自身が取り組んできた研究や技術を次世代に伝えていかなければいけないと考えています。自身が情報技術を身につけて、仕事を行うことも難しくはあるのですが、それ以上に難しいのが、次の世代に知識を伝えていくことです。幸い現在は学生に情報技術を教える立場にありますので、将来の世代の育成という視点からも多くの成果が出せるように、様々なことに取り組んでいきたいと考えています。