地方の魅力ある企業経営者の声を集めた音声プラットフォーム「就活ラジオ」や、約3週間の内定直結型スキルアッププログラム「就活道場」を提供する、株式会社就活ラジオの代表取締役、碓井一平様にお話を伺いました。普段から多くの就活生と接している碓井様が、現代の就活構造の課題も踏まえながら、学生が本当に納得のいくキャリアを築くための方法を探ります。
株式会社就活ラジオ
代表取締役
碓井 一平さん
2019 年まで富山県内の測量コンサル会社の3 代目代表を務めるが辞任し、同年にLabore株式会社を共同創業。代表を務める。就活・採用支援事業に約2年間関わる中で、既存の就活構造に課題の深さを感じ、別会社として株式会社就活ラジオを立ち上げ、現在課題解決に取り組む。
社会を知ることで就活の不安が軽減される
これは僕が起業したきっかけでもあるのですが、社会に出る前から、社会はすごく厳しい世界だと思い込んでいる学生が多いです。
もちろん上を目指せばきりがないですが、実際は思っているほど厳しくありません。ほとんどの社会人は、みんな定職に就いて、生計を立てられています。
「私には活躍できるところがない」「将来働き続けられるか不安」といった懸念は、日本にいる限り過度に心配する必要はありません。約束を守ること、人を傷つけないこと、相手を尊重することなど、人として最低限のことができていれば社会人になれます。
それでも不安なときは、自分の兄弟や身近な先輩が、会社でうまくやっているという情報を知るだけでも良いです。現実を知ることで、漠然とした社会への不安は払拭できます。
社会との繋がりを作り現実を知る
社会のことを知るためには、学生の間に社会との繋がりを作ることが大切です。
具体的には、以下の3つの方法があります。
1 インターン・アルバイト
2 サークル・学生団体に所属
3 共創型の施設に行ったり、地域のイベントに参加する
3に関しては、都会にはもちろん、近年は地方にも増えているので、ぜひ積極的に活用してみてください。せっかくなら、居心地の良い場所に留まるのではなく、少しハードルに感じるところに飛び込むのがいいでしょう。
大切なのは手段よりもマインドセット
個人的には、アルバイトよりもインターンシップの方が、より実践的な経験が積めるので良いと考えています。しかしアルバイトがダメというわけではありません。
重要なのは、どのような活動でも積極的に関わり、社会とのつながりや人脈を広げようと意識することです。それにより就職活動や将来のキャリアに役立つ情報やアドバイスを得ることができます。
ゆとりのある働き方をしたい人は地方企業就職も選択肢に
たとえば、月収約30万円、年収で約450万円前後を目指している人がいるとします。
オフィスが東京の中心部にあると、その辺りは家賃が高いので、通勤に片道1時間ほど離れた場所から通勤することになります。それでも1DKの部屋で家賃は10万円を超えます。さらに、月収約30万円もらうためには、残業して残業代で稼ぐパターンが多いです。
通勤に往復2時間かけて、月収30万円のために残業もして、そうなると基本的に自由に使える時間は、1日の中にほとんどありません。
一方で、地方在住で月約20万円の手取りがあり、通勤にかかる時間は自家用車で30分以内に住んでる人がいるとします。給料は都内の人と比べて10万円低いですが、固定費や通勤時間が全然違うので、自由な時間とお金は割と多いです。
このように、自分がどういうライフスタイルを送りたいかによって、就職先を選ぶことが大切です。ここまで具体的に考えて初めて、地方企業の就職に魅力を感じるのかなと思います。
地方中小企業の方が自分の特性を活かせる場合もある
都内にある超人気企業の採用倍率は、100倍から1000倍にもなります。たとえば、早慶といった優秀な都内の大学生は、1〜2年生ぐらいからインターンを始めたりなど、その企業への就職に向けて動き出しています。
一方で、地方の学生でアルバイトとサークルしかしてこなかった場合、3年生の途中から就活をはじめると、前者にはかなわないです。自分が学生生活でやってきたことや、具体的に何ができるのかを履き違えてる人は、就職活動はうまくいきません。
しかし、自分がやってきたこととできることが、地方中小企業でなら発揮できる、マッチするということがあります。地方中小企業で実力が十分発揮できて、成果を認められて、出世して、いいポストにつければ、家庭やマイホームを持って、比較的裕福で時間やお金に余裕がある生活ができます。
地方就職の魅力が届けられない就活プラットフォームの現状
現代は、地方の良さが届けられていないサービスやプラットフォームが多いです。それは就職活動のサービスだけでなく、InstagramやYoutubeといったSNSもそうです。
都会の暮らしを見ると、あらゆるネットワーク、乗ってる車、生活洋式が華やかで、地方の暮らしはどこか地味。就活系のサービス問わず、そういうキラキラしたものが前に出る世の中で、そうでないものは魅力的に映らない世の中になっています。
地方の働き方や生活を魅力的に見せれてない企業や自治体側にも問題はあるのですが、逆にそういうところを魅力的に映し出せないサービス側の問題も同時にあると感じます。
自己理解を深めることが納得感のある就活への第一歩
企業を見るときのポイントは、実はそんなにありません。企業の情報はきちんと出てますし、出ている情報以上に知ることは難しいです。
正直就職というのは、実際に入ってみないと分からないことだらけです。配属された部署や直属の上司次第で、充実して働けるかどうか決まることもあります。
就活生の皆さんは、企業を見るよりもまずは、自分自身をよく見た方がいいです。そもそも自分が何を目指しているのか。これがやりたいの前に、自分は何ができるのか。そこにしっかりと向き合ってください。
他人軸ではなく自分軸を見つける
自己分析に捉われすぎるのも良くないです。永遠に自己分析で迷子になっている学生もよく見かけます。自己分析を通して、自分の軸を見つけることが大切です。
もっと具体的に言うと、たとえば普段から人混みを避けている、昔から大きい部活動ではなくて個人競技の部活動に絞って入部してきた、といった判断軸は、振り返るとこれまでの決断に出ているのではないでしょうか。
それが就活になると、偏差値競走みたいな点があるので、「自分はポジティブ思考だ」「コミュニケーション能力が高い」「アウトドア派だ」「大学ではサークル長をやってきた」みたいに書き換えてしまう学生が多いです。
一度偏差値や他人の評価を忘れて、自分にもっと素直に「自分は何をやってる時に喜びを感じて、何を避けてきたか」といったことに向き合ったらいいと思います。
偏差値競走や他人の評価から早く抜け出す
僕の周りで納得感のあるキャリアを選択できた学生たちは、どこかの時点で、他人の評価や親の押し付けを抜きにして、「本当の自分ってこんな感じでした」と気づけた人たちです。
よくいるのは「仲のいい友達が自分よりいい就職先が決まったから、もう1回就活をやり直したい」と言う人です。でも、早くそういう競争から脱出して、本当の自分の判断軸に気づければ、すごく楽になります。
フィードバックをもらえる環境に身を置き自分を客観視する
内定になかなか結びつかない学生に共通しているのは、自分を客観視できていないことです。
たとえば、デザイナーに憧れて、ポートフォリオもない状態で、デザイン会社を受け続けている学生がいるとします。しかしデザイナーは、基本的にポートフォリオありきで選考されるので、その学生は永遠に書類選考で落とされてしまうのです。
でも、一度人に聞いたり先生に聞いたら、「それはポートフォリオを出さずに デザイン会社を受けてること自体間違えだよ」といったフィードバックがもらえます。
なぜ自分が内定をもらえてないのか分からないという人は、一度他人に聞いてみて、その人に言われたことを素直ににやってみてください。親友やご両親よりは、キャリアセンターの職員のようなフラットな人に聞いてみるのがいいかもしれません。
学生生活で大事にすることは人それぞれでいい
就職活動の早期化におされてしまう中小企業や学生が増えています。一方で、本当にいい企業に就職するために1年生や2年生からコミットしてる子たちもいるので、学生時代に何をするか、何を大事にするかは本人次第だと思います。
大学でしっかり勉強がしたいと思えばしたらいいですし、部活動に専念したいと思えばしたらいい。それは全部グラデーションでいいんじゃないかなと。
良くないのは、自分が大学に来た目的も考えずに、就職活動の早期化に踊らされてしまうことです。世の中の情報に振り回されるのではなくて、自分の軸で動きましょう。
今の環境の有り難みに気付くと強い
もう一度大学生に戻って勉強したいと思っている社会人は多いです。今仕事をしながら勉強するのがこんなに大変なのに、どうして大学生の時にもっと勉強しなかったんだろうと。
私は、社会人になってマーケティングの勉強をしていたときに「そういえば大学の時にマーケティングの授業があったな。すごい先生が大学にいたな」と思いだしました。他にも自分が購入した書籍を見たら、大学の教授が執筆していたり。そういうときには「もう1回あの授業をちゃんと受け直せたら」と思います。
こういったことに大学生のうちから気づけたら、行動も自然と変わるのではないでしょうか。今の自分が置かれてる状況の有り難みを知れたら良いですね。
就活ラジオが目指す既存の就活の価値観変容
今まさに作り込んでいるのですが、人にはそれぞれ適材適所があるので、それをちゃんと選べるサービスを作りたいです。
でも、それらが今はなかなか見出せないような構造になっていますし、その極端な構造を作ってるのは、やはり就活・人材系のサービスです。
本当は地方中小企業で働きたいと思っている学生が、そういった企業を選びづらい雰囲気や「キャリアアップするなら東京」となっている現状を、本来はそうじゃないよ、という受け取り方ができるサービスを作っていきたいです。
脱利益主義の世界観を作る
今は情報を握ってる人たちが、利益主義になりすぎていると感じます。もちろん、資本主義の世の中なので、そうなってしまうのはしょうがないですし、それが就職活動の中にも起きてることは十分理解できます。ただ、そうではない世界観を作れたら、もっと学生がやりたいことや希望を見出せる世の中になると考えています。
私たちが創業当初から掲げている「既存の就活をなくす」というキャッチコピーには、そういった「既存の就活の価値観変容を目指していく」という想いを込めています。
就活サービスにイノベーションを起こす地方初のスタートアップ
私たちが創業当初から唯一掲げていてずっと変わらないのが、どこまで行っても就活生のためのサービスを作るということです。
私たちの存在意義や、私たちが今後出すであろうサービスは、就活生に対してインパクトのあるサービスであること、それこそがこの会社の使命です。
現在も日々、イノベーションを追求し、実証実験を繰り返しています。新しいサービスもどんどん進行中です。地方発のスタートアップが、既存の就活サービスにイノベーションを起こしていく。必ずその世界観を目指して成し遂げるので、是非注目していてください!