
株式会社MIZUKAra
代表取締役
肥田憲和さん
20代は舞台俳優として活動。
2015年、人材派遣会社勤務中に国家資格キャリアコンサルタントを取得。2020年に人材教育を主として「MIZUKAra」を立ち上げる。
役者の経験から、その表現力を活かし企業の従業員研修などでさまざまなパーソナリティ研修を歴任。
今回は、株式会社MIZUKAraの代表取締役、肥田憲和さんにお話を伺いました。
MIZUKAraは「不本意な退職を減らし、顧客の生産性向上を支援する」のミッションのもと、キャリアコンサルタントや「働きやすい環境づくり」に向けたセミナーを開催しています。
舞台俳優から起業家へ:経験がつなぐキャリア
高校卒業後、私は芸能系の専門学校に進学しました。というのも、当時の私は声優を志していたからです。その修学過程の中で舞台での表現に強く惹かれ、当時は全く意識していませんでしたが、そのころからキャリアチェンジを行っていました。
20代の間は、そこで身につけたスキルや経験を活かし、舞台俳優として活動していました。
しかし、30代に差し掛かってもなお、依然として芽を出すことができない自分に限界を感じ、芸能活動から手をひくことを決めました。
それでも、その10年間が無駄だったとは思っていません。
というのも、私が経営する株式会社MIZUKAraでは、プライベートコンプライアンス講座など、さまざまなセミナーを企画・開催しています。
私自身が講師を務める講座も多く、その際、役者時代に培った表現力(表情・発声・滑舌・他)が大いに役立っています。
また、弊社では「パワハラ防止措置社外窓口」の事業運営も行っています。
これは、役者を引退後に勤めた企業で、私自身がパワハラ被害を経験したことに起因しています。
つまり、これまでの全ての経験が、今の事業に活かされており、無駄なことはひとつもなかったと実感しているということなのです。
「夢」に向けて新たな一歩を踏み出すのに、遅すぎるということはない

これは、40代後半で起業した私だから言えることかもしれませんが、何事においても、はじめるのに遅すぎるということはないと思います。
今現在、転職活動に取り組んでいる方においては、将来に不安を感じていたり、自分がなにをしたいのかわからないと感じていたりするかもしれません。
このような方においては「自分の夢」に目をむけて、仕事を探してみるのはいかがでしょうか。
昨今においては、他者に「夢を持つように」言うことは、一種のハラスメントであるという言論が幅を利かせていますが、私はそうは思いません。
夢というのは、なにも、職業のことだけをいうのではないからです。
私は、夢とは「自分自身がつい、その実現に向けて、努力したくなる目標」のことだと考えています。
大谷翔平さんや藤井聡太さんのように、早い時期にこれと出会えた人、これを見つけられた人もいらっしゃいますし、私のように、40歳を超えてから、これと出会う人もいます。
私の場合は「キャリアの概念」に触れたことにより気付けたように感じます。
私の夢は、自分の経験も踏まえての話ですが、「不本意な退職を減らしたい」という想いでした。
多くの方が自分のキャリアに気付き、自ら望む人生を歩き出せること。大切なのは、夢と出会えた時に、それをすぐ我が物にできるよう、準備をしておくことだと思います。
現代において、マネージャー(経営者・管理職)が果たすべき役割とは?

若い方の中には、いわゆる「推し活」に熱心に取り組んでいるという方が多いと思います。
私も事業を進める中で、そうした方々と関わる機会があるのですが、その主体性や積極性にはいつも驚かされます。
自分の好きなことに夢中になるだけではなく、横のつながりを形成したり、情報を自ら集めたり——
その熱意や能力を仕事に活かせたら、すごいことが起きますよ!
ここで重要となってくるのが、マネージャー(経営者や管理職)の存在です。
これらの方においては、部下・働き手の「一見業務とは関係ないような趣味・嗜好」と仕事の関連性を見出し、これをもとに、メンバー(部下・働き手)のモチベーションや自己肯定感を引き出すことが求められるでしょう。
マネージャーが押さえておきたい2つのモチベーション
昨今では「モチベーション」という言葉が至る所で多用されていますが、私は「モチベーション」には2つの種類があると思っています。
ひとつは、昇給やボーナスなどといった、画一的な「報酬」によってもたらされる【外的モチベーション】。
しかしながらこれは、一度「報酬」を獲得してしまえば、潰えるものであり、マネージャーにおいてはより良い「報酬」を用意し続けることが求められます。
これでは、マネージャーにとってはもちろん、メンバーにとってもお互いに辛い結果になるだけで健全ではないでしょう。
大切なのは「結果として得られるもの」ではなく、その「過程・結果自体」を報酬と感じられるようにすることです。それが2つ目の【内的モチベーション】です。
自分自身で報酬を設定するので、モチベーションが高い状態で維持され、主体性にも繋がり易くなります。つまり、この「過程・結果」を、相手にとって価値あるものにすることに、マネージャーの手腕が問われるでしょう。
マネージャーの仕事は「チームメンバーが活躍できる環境を整えること」
私は、マネージャーの仕事とは、「チームメンバーが活躍できる環境を整えること」であると考えています。
近年では、現場の業務をこなしながら部下を管理する、いわゆる「プレイングマネージャー」がもてはやされる風潮がありますが、私個人としては、この流れには賛同しかねます。
仕事量が増えることで、本来の「チームメンバーにとって最適な環境を整える」という業務に割けるリソースが減ってしまうからです。
また、企業によっては、従業員に対して、画一的なアプローチを行っているところも少なくありません。
営業成績に応じた昇進制度などはまさしく、その一例だと言えるでしょう。
しかし、会社というのは、多種多様な個性を持った人が、様々な価値観のもと、仕事を行う場でもあります。
社員を一括りにするようなアプローチが功を成すことは、極めて稀だと言えるでしょう。
従業員一人ひとりに合った働きやすい環境を、可能な範囲で整える。これができたら生産性が上がると思いませんか? それが管理職の大切な業務だと考えます。
環境整備には従業員とのコミュニケーションが重要
環境を整えるため、弊社のセミナーでは、まず初めに、次のようなことをお伝えしています。
従業員の皆さんは環境を変えるための力、いわゆる権力を持っていません。 つまり、いち従業員には、自身の置かれている状況に不満を感じていても、これを改善することは難しいのです。 だからこそ、マネージャーにあたる経営者・管理職が従業員の皆さんのニーズを汲み取り、代わりに是正する必要があります。 それができなければ、離職率は高まり、定着率は下がっていく一方でしょう。」 |
しかし、これを実現するには、マネージャーとメンバーの双方が適切なコミュニケーションをとり、互いに働きかけることが欠かせません。経営者や管理職の勝手な思い込みで作る施策では、従業員に受け入れられるとは限らず、場合によっては敬遠されてしまいます。
勘違いを是正することも管理職の重要な責務
昨今は、労働者の権利が拡大していることもあり、いわゆる「逆パワハラ」のような事例が増えています。
- 上司の指示や注意を無視する
- 上司の指示をパワハラと訴え、謝罪や賠償を要求する
このような事例の背後には、メンバーの誤った認識、いわば「勘違い」があるものと思われます。組織で働く上では、何でもかんでも自身の欲求を言えばよい、言えば通るというものではありません。下手をすればチーム全体の雰囲気を破壊してしまいます。
この「勘違い」に対して、早期に適切な対応を取ることは、マネージャーの重要な責務のひとつです。
これは、会社全体のためだけではなく、当該メンバー自身の成長のためでもあります。
しかし、そのような指摘を適切な形で行えている人は、あまり多くはないというのが実情です。
また従業員の中には、指摘を受け入れることができない人も少なくありません。
そのような方は、どこの職場に移っても同様の問題を抱えることになるでしょう。
キャリアコンサルティングなどを通じて、意識を根本から改革する取り組みが求められます。
環境改善には社員とのすり合わせが重要
イギリスの2022年10月に実施された最新調査「Future Forum Pulse」において、「勤務時間の柔軟性」を求めていると回答した労働者の割合が94%を超えていました。
このことからも分かる通り、現代においては、労働環境の柔軟性が重視される傾向にあります。
しかしながら、経営者においては、相手の要求を何でもかんでも受け入れるのではなく、面談などを通じて意識のすり合わせを行うことが、互いのためなのではないかと私は考えています。
組織改善の妨げになる「人罪」を見極める
ですが中には、どれだけ働きかけを行っても変われない人というのが、少なからずいらっしゃいます。
弊社では、このような他の社員を萎縮させ、会社の発展を妨げる人材を「罪の人材」、すなわち「人罪」と呼び、これらの人に対して、適切な処分を下すこともまた、管理職の重要な職務のひとつだと考えています。
その時に、適切な働きかけ(ネガティブ・フィードバックなど)を行うことも、マネージャーに求められる能力、覚悟のひとつだと思っています。
企業によっては、この人罪が、要職についていることも少なくありません。
働き手の皆さんにおいても、自分が「罪」になってはいないかと、定期的に見直すことをお勧めします。
自己評価と他者評価を比較・参照し、自分は人「財」なのか、それとも人「罪」なのかを振り返ってみましょう。
企業の風土改善を成功させる鍵は双方への働きかけ – 株式会社MIZUKAraのアプローチと取り組み
弊社では、上述のセミナー・キャリアコンサルティングをはじめ、組織の風土改善に向けた取り組みを幅広く請け負っております。
組織の風土改善においては、社員の存在はもちろん、経営者の判断も非常に重要となってきます。
そのため、弊社では、従業員の意見をヒアリングするだけでなく、管理職に対しても積極的に働きかけを行っております。
私たちが目指すのは、現場で顧客と接している従業員が存分に力を発揮できる環境をつくることです。
MIZUKAraが考える良い企業・あなたが輝ける良い企業
「良い企業」の定義は人によって様々かもしれません。
私は「従業員の成長を積極的に支援する企業」「数あるステークホルダーのうち、従業員とその家族を最も大事にしている企業」においては、「良い企業」と言っても良いのではないかと考えています。
転職活動中の方は、口コミなどを参考にしながら、そんな企業を見つけていただきたいと思います。
しかし、まず大切なのは「自分が輝ける環境とはどのようなものか」といった自己理解を深めることです。
自分にとっての良い企業をしっかり考えることで、より理想的な職場に巡り合うことができるのではないでしょうか。
企業と従業員が相思相愛で労働契約を更新し続けることができる会社。多くの方が求め実現しようとして立ち止まっている理想だと思います。その理想の実現に向けて、株式会社MIZUKAraは支援を続けていきます。