【学奨財団理事長】「これをやっておけば正解」はない。変化する労働環境の中で必要なこととは

一般財団法人大学生奨学財団(学奨財団)では、明確な選考基準のもと、返済不要の奨学金を大学生に給付しています。

同財団で理事長を務める村中敏彦さんに、財団の特徴や仕事で大切にしていること、これからの時代に必要となるスキルについて伺いました。

学奨財団
理事長
村中敏彦さん

1963年生まれ。京都大学法学部、日本IBM、カネカを経て、1992年から日経BPにて編集記者、新規事業開発、マーケティング・コンサルティングに従事。同社退職後、2022年に自ら創設した学奨財団で理事長に就任。

透明性と多様性を重視した運営が特徴

村中敏彦さん

学奨財団は、経済支援を要する優秀な大学生に返済不要の奨学金を給付し、キャリア形成につながる学びの機会を提供しています。当財団の特徴は、透明性と多様性です。具体的な選考基準・方法、選考分析結果まで公開しており、選考委員は、男女同数、文系理系同数、出身の大学や学部、職種に多様性をもたせています。

当財団では奨学生が選考委員や役員、協賛社などの企業人と交流できる機会を設けており、奨学生からは進路やキャリア形成についての助言やヒントが得られると好評です。役員等による講演会での質疑応答の場では、奨学生が鋭い質問を連発し、立食パーティでは社会人と積極的に交流する姿が見られました。協賛社などサポーターの方々から「学奨財団の奨学生は素晴らしい」とお褒めの言葉をいただくたびに誇らしくなりますね。

学奨財団立ち上げにつながる体験

村中敏彦さん

私は、財団の設立前に務めていた日経BPの出向先(日経BPコンサルティング)にて「クルマの情報化市場調査」のプロジェクトを企画しました。日経BPコンサルティングでは、クライアントから受託した調査を実施し納品する案件が主だったのですが、そのような中で、自主企画型の高額の調査レポート商品を初めて企画しました。

クルマ関連の事業に携わる専門家と、一般ドライバーの意識やニーズを対比させたアンケート調査結果に、業界関係者のインタビューを織り交ぜたもので、当時としては画期的な内容でした。そのレポートを販売したところ、自動車や自動車部品、IT、広告など幅広い企業に評価いただき、同社の経常利益を上回る収益を上げることができたのです。

ここで、私は価値ある商品を企画し、関係者の協力を得て世に出して顧客や関係者に喜んでいただくという一連のプロセスを学びました。この体験があったからこそ、社会的価値のある財団を、理念から、応募者や協賛社に向けた仕様の詳細まで企画し、候補者段階の役員等やサポーターを巻き込んで作り上げていくことができたのです。

提供できる価値を明確にすることで賛同を得る

村中敏彦さん

私が仕事をする上で最も大切にしているのが、提供する価値をよく考えることです。学奨財団は、設立前に多くの大学生や教育関係者へインタビューし、リクルート社による大規模調査の企画に協力することで、私たちが提供できる価値を考え抜きました。その価値とは、「奨学生が誇りと充実感を感じられる奨学金」、その基盤となる「キャリア形成につながる学びの機会の提供」です。

また、財団の役員等をスカウトする際には、単なる人員確保ではなく、私たちの取り組みがもたらす社会的価値への理解を共有できる方かどうかを最重要視しています。協賛いただいている企業様も、学奨財団の活動理念に共感し、社会貢献への強い意志を持って継続的にご支援いただいているのです。

柔軟性と努力を継続できる力が大切

10〜30代のみなさんには、関心のあること、やりたいことにどんどん挑戦していただきたいと思います。失敗を糧にしながら自分の引き出しを増やし、成功体験を積んでいってほしいですね。最初はやりたいことがなくても、目の前の課題に取り組み、周りと協働していく中で、やりたいことが見つかったり、軌道修正の機会を得たりします。

AIの発達や労働市場の変化などで環境も変わっていくので「これをやっておけば正解」というものはなく「自分がやっていることを正解にしていく努力の継続」が大切です。相反するかもしれませんが、これからは環境に適応する柔軟性と、やりたいことを頑張れる強さの両方があると良いですね。そうした力は、異なる立場や世代の人ともコミュニケーションをとり、学ぼうとすることで育まれていくでしょう。

支援の輪を広げ、より高みを目指していく

学奨財団の1期生はまだ大学3年生です。彼らが卒業後に学奨財団の交流会で自身の仕事について講演するなど、社会に貢献する人材として活躍することを期待しています。そのために、私自身もそうした環境が整うように、私たちが提供できる価値や財政などの面で、財団の基盤強化に努めたいと思っています。

さらに、学奨財団が特徴とする透明性や多様性を重視する価値観が社会に浸透し、さまざまな奨学金財団が登場して、若者支援の輪が広がっていくことを願っています。私自身もそこで、共に切磋琢磨しているのが理想ですね。

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